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学級担任の先生方へ

GUM10_CL09040.jpgこのページでは、学齢期の吃音(きつおん: ことばがどもること)の特徴と、学級担任の先生方による吃音がある子ども達への支援の方法について説明しました。吃音は、人口の1%いると言われているように、非常によく見られる問題のひとつです。先生方のクラスにも、もしかしたら、吃音の問題で悩んでいる子どもがいるかもしれません。そのような場合に、このページに書かれていることをご参照いただければと思います。

このようなお子さんが先生のクラスにいらっしゃいませんか? 

  1. お話しする時に以下のような状態になる時がある
    • 「わ、わ、わたし」と繰り返して話す
    • 「わーーーたし」と長く伸ばして話す
    • 「・・・・・わたし」と言葉の出だしがなかなか出てこない
  2. お話しするときにのどや口、鼻に力が入ってスムーズに言葉が出てこないときがある。
  3. お話しするときに手や足を拍子を取るように動かして話すときがある
  4. お話しするときに目元や口元がピクピクと動くことがある
  5. お話しすることが苦手で、授業中に手をあげて発表することがほとんどない
  6. 休み時間など、友達とお話しすることを避けている様子がある
  7. ことばのことで友達からからかわれている時があるようである

 このようなお子さんの中には、「吃音(きつおん)」という言葉の問題を抱えている場合があるかもしれません。

「吃音」とは

 「吃音」とは、語頭音を繰り返したり(「わ、わ、わたし」)、引き伸ばしたり(「わーーたし」)、つまったり(「・・・わたし」)して、滑らかに発話ができなくなる状態のことをいいます。「吃音」のことは、少し前までは「どもり」と呼ばれていました。しかし、今では、「どもり」という言葉は差別的な意味合いが強いため公式な場で使用されることはありません。
 吃音の問題には、大きく「話し言葉の問題」と「心理的な問題」、「周囲の誤解や偏見からくる問題」の3つに分けることができます。「話し言葉の問題」とは、前述した言葉が繰り返したり、引き伸ばしたり、つまったりするいわゆる「どもる」話し方のことを言います。「心理的な問題」とは、吃音の話し方で話すことに怒りや悲しみ、恥ずかしさを感じたり、「自分はダメな人間なのだ」と自己肯定感が下がってしまう状態などを言います。「周囲の誤解や偏見からくる問題」とは、吃音の話し方を「へん」、「おかしい」、「こっけい」なものとしてからかいやいじめの対象としたり、「どもりは頭が悪い」、「どもりは先祖のたたりである」、「どもりはうつるからどもりの子と遊ばせてはいけない」など科学的な根拠の全くないことに基づいて吃音の人と対応しようとすることなどを言います。このように、吃音の問題は、単に話し言葉の問題だけでなく、吃音がある人の生活全般に深い影響を与えるものであるということができます。
 吃音の問題を抱える人は、全人口の1%を占めると言われています。その大部分の方は、話し言葉に不自由を感じつつも、仕事や日常生活に大きな支障を感じることはありません。しかし、中には、人前で話せないことから、仕事や日常生活に大きな支障をきたし、就職できない、仕事上の業務が出来ない、社会に出て行くことが出来ない等の深刻な問題を抱えてしまう人もいます。

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学齢期の吃音の特徴

 学齢期の吃音の特徴としては、以下のようなものがあります。ただし、個人差がとても大きいので、以下に書かれていることが、必ずしもすべての吃音があるお子さんにあてまるわけではありません。

  1. ほとんど吃音が出ない時期があるかと思えば、しばらくするとまた再び吃音が強く出るようになる等、吃音の話し方出現には波があります。吃音の波は、小学校低学年のお子さんにはより顕著に認められます。波の周期は、個人差が大きいのですが、多くの場合、1ヶ月から数ヶ月単位で良い時期と悪い時期を繰り返すことが多いようです。
  2. 吃音が出にくい場面と出やすい場面が別れている場合があります。例えば、国語の時間の音読場面ではほとんど吃音が出てこない一方で、友達と雑談する時には吃音が多く出てしまう場合があります。また、その逆に、友達と雑談している時にはほとんど吃音が出てこないのですが、国語の音読では吃音が多発する場合もあります。
  3. 多くの吃音の人は、独り言をいう、動物や赤ちゃん等しゃべらない相手に対して話しかける、歌を歌う、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音は出現しないか非常に軽い吃音が出現するのみとなります。
  4. 心理的な問題だけが突出して大きくなっている場合があります。この場合、日常生活の中ではほとんど吃音の話し方は出現しませんが、内面では絶えず「どもったらどうしよう」、「自分はダメな人間だ」と吃音に対する不安や劣等感が渦巻いていて、総合的な吃音の問題はむしろ深刻な場合が少なくありません。また、吃音の話し方で話すことを避けるために、吃音が出にくい言葉に言い換えて遠回しな表現を用いたり(「鉛筆」と言う代わりに「字を書く時に使うあれ、消しゴムで消せるやつ」等と言うなど)、吃音で話す苦痛から逃れるために、話す場面を避けたり(本当は野球部に入りたいのだが練習の時のかけ声を言自信がないのであまり興味のない文化部に入る、友達の前で吃音の話し方で話したくないので友達を作らず休み時間なども一人でいる、将来の進路選択の際にできるだけ喋らなくても良い職業を選択するなど)することも少なくありません。

学級において適切な支援を行うことが必要です

 吃音があるお子さんの吃音問題の軽減を取り扱う専門家には、言語障害児通級指導教室(ことばの教室)や病院等にいる言語聴覚士をあげることができます。これらの専門家の下に通うことで、楽に滑らかにお話しする方法を学んだり、心理的な問題の軽減を図ったり、社会の誤解や偏見と立ち向かっていく力を身につけていくことなどができるようになります。しかし、楽に滑らかに話す方法の習得や心理的な問題の軽減には通常かなりの時間が必要になります。また、おしゃべりする度にからかわれるなど、お子さんの周囲の人たちの誤解や偏見がなくならないとなかなか専門家のもとで習得したことを実生活で活かすことは困難となります。そこで、学齢期のお子さんが一日の生活の大きな部分を過ごす学級において、吃音があるお子さんが安心して自信を持ってお話したり、からかいやいじめなどを受けないで穏やかに生活していかれるようにするために、学級において適切な支援を行うことが必要です。

学級における支援についてのご提案

 吃音があるお子さんが先生方の学級にいらっしゃる時、学級担任として行うことができる支援の例を以下にあげました。これらの中には、既に先生の方でご配慮いただいていることと重複することも多く含まれているのではないかと思います。吃音があるお子さんに対する対応や支援を考える際の一助になりましたら幸いです。

  1. 吃って話す時など、なかなか声が出てこない時には、出来ればお子さんの口から言葉が出るまで待っていただいて、「ゆっくり」とか「落ち着いて」、「もう一回いってごらん」等の言葉かけは控えていただくのか良いと思います。そして、話し方についてではなくて、「話している内容」に耳を傾けて、お話を聞いていただければと存じます。さらに、先生の方が、ゆっくりと話しかけたり、十分に間をとりながらゆったりと接するなどを対応をしていただけますと、吃音が少ない話し方で話す事が可能になる場合が多いと思います。
  2. 発表場面等の対応についてですが、吃音があっても積極的に発表することは大事なことです。そこで、他の子供と同じように吃音があるお子さんにも発表の機会を与えていただき、吃音があるおお子さんにもそれに答えて発表をすることで発話に対する自信が深まっていくようご配慮いただければと存じます。この時に、少し吃っても発表が出来たことに自信がもてるようにご高配いただければと存じます。
  3. 本読みの場面などでどうしても吃音がでてしまってうまくお話しできない場合は、クラスメイトと2人のグループを作って読む、先生と一緒に読む等、他の人と一緒に読むという場面を作ると吃音があまり出ないでお話しできることがあります。そこで、例えば、国語の本読みを授業中にする場合など、1人で読むのではなくて、2名のグループを作って「お互いの声を良く聞いて、2人で声を合わせて読みましょう」などと教示するなどすることで、本読み場面にもうまく参加できるようになるのではないかと思います。
  4. 吃音があるお子さんのクラスメイトの中には、「どうして。○○ちゃんは『ぼ、ぼ、ぼ』って話すの?」等と、吃音があるお子さん本人やそのご両親、担任の先生に質問をしてくる場合があります。このような質問は、全く悪意のない純粋な疑問からくるものなのですが、そのような質問を受け取った本人や両親は、非常に動揺したり、「吃音のことをからかわれた」「変なことを言われた」と受け取ってしまう場合も少なくありません。このような質問に対しては、まず質問をしてきたお子さんに対して「ぼ、ぼ、ぼ」って繰り返すのは話し方のくせみたいなもので、おかしなことや変なことではないことを伝えていくと共に、質問を受けた本人や保護者の方に対しては、そのような質問には悪意はなく気にする必要はないこと、吃音の話し方で話すことがいけないことや恥ずかしい劣ったことではないことを伝える必要があります。
  5. 吃音を持つお子さんが学童期に抱えやすい問題のひとつに、吃ることに対するからかいやいじめがあります。多くの保護者の方は、「吃音が原因でからかわれたり、いじめられたらどうしよう」と吃音からくるからかいやいじめが起きることに不安に感じています。また、からかわれたりいじめられたりした吃音のお子さんの中には、一見何も気にしていないような態度をとるお子さんもいますが、実はとても傷ついているのだが、そのことをうまく言い表せないだけという場合も少なくないようです。からかいやいじめに対する対応としては、まずは、吃ることは「くせ」みたいなもので、背の高い子や低い子がいるように、話す時につまって言いにくい子やすらすらと言える子がいることを折りに触れてお話いただくことが有効であるようです。また、からかう子供に対して、吃音は言いたくても言えない状態であり、怠けたりふざけているわけではないことをお話いただくと共に、吃音のお子さんはからかわれてとても嫌な思いを傷ついていることを伝え「人の嫌がることをしてはいけない」ということを毅然とした態度で伝えていくことが必要になると思います。
  6. 吃音の話し方は、とてもとても目立つものであるため、吃音があるお子さんは、様々な活動の正否を「うまく話せたか」という発話面の評価のみで行ってしまう傾向が多いようです。また、学級担任の先生が吃音のあるお子さんの評価をする時も、「今日は上手に話せた」、「今日は吃音が目立った」などと話し言葉の面に注目しがちです。しかし、授業や係活動などにがんばって取り組んだことや、ユニークで優れた発言や工作物などの作成、やさしい性格や友達関係の充実など、吃音の有無以外の側面にも、吃音のあるお子さんの良い面(や悪い面)の評価を行うことは色々とできると思います。そして、そのような評価は、ともすると様々な活動の正否を「うまく話せたか」という側面で行ってしまう傾向のある吃音のあるお子さんに、それ以外の様々な活動の中にも自分の得意な面や活躍できる面があることを知らせていくきっかけとなると考えられます。これらのことから、発話の正否以外の側面でお子さんのことを評価し、その評価をお子さんにフィードバックしていくことが重要であると考えられます。

 なお、これらの支援を行っていく時には、吃音があるお子さん本人に対して、どのような支援をして欲しいかあらかじめ相談しておく必要があります。私は、吃音がある方に学齢期に学級担任の先生からどのような支援を受けたかったかについてのアンケート調査を行ったことがあるのですが、その結果から吃音がある人の担任の先生に対するニーズは非常に多様で、時には正反対のニーズが存在することがわかりました。例えば、吃音のことでからかう他のお子さんに対して、先生からホームルームなどの場でそのようなからかいをしてはいけないとクラス全体に注意して欲しいと思っている人がいる一方で、クラスの前で自分が吃音があることがばれてしまうそのような注意は絶対にして欲しくないという人もいました。このように吃音がある人の学級担任の先生方に対するニーズは様々で、場合によっては先生が「よかれ」と思って行った支援が裏目に出ることもあることを示唆していると思います。お子さんの学年や性格、吃音に対する意識の程度によっては、お子さん本人に直接聞くことが困難なこともあると思いますが、その際には保護者の方やことばの教室の担当の先生などと対応についてできるだけ協議をするなどしてお子さんの状態やニーズに応じた支援を行うことが必要だと思います。

おしまいに

 以上、吃音があるお子さんの特徴や支援の方法の概要について説明させていただきました。吃音についてのさらに詳細な情報については、吃音Q and Aや、吃音に関する資料集、吃音情報源のページをご参照いただければと思います。また、お子さんがことばの教室や病院等の専門機関にかかっている場合は、是非、ことばの教室の担当の先生や専門期間の担当の先生とコントクトをお取りいただき、学級の中での配慮事項についてのご相談をしていただけばと存じます。このページについての感想やご要望、ご意見などがございましたら、小林までおよせいただければと存じます。何とぞよろしくお願いします。

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