吃音Q and A
吃音とは
Q1-1 吃音とは何ですか
吃音とは、ことばが「どもる」ことをいいます。「きつおん」と読みます。言葉が「吃る」とは、語音を繰り返す(「ぼ、ぼ、ぼく」)、引き伸ばす(「ぼーーーく」)、つまって出てこない(「・・・・・ぼく」。ブロックともいいます)等の言語症状が出ている状態のことを言います。ただし、多くの場合吃音の問題は、単に言葉の話しにくさにとどまらずに、話すことやコミュニケーションの場面を避けたり、自分に自信が持てず自己肯定感が低下してしまったりというように、生活に支障をきたす問題へと発展していきます。その結果、少数ですが、進学や就職が出来ないという深刻な問題をもたらす場合もあります。
Q1-2 「ことばがどもる」とは、具体的にはどのような状態を差すのですか
音や音節を繰り返したり(「ぼ、ぼ、ぼくは」)、引き伸ばしたり(「ぼーーーーくは」)、つまってしまって出てこなかったり(「・・・(つまっている)・・ぼくは」)といった状態になることをいいます。また、これらの繰り返しや引き伸ばしに加えて、顔や体全体に力を入れたり、手や足で拍子をつけて話をしたりといった状態が見られることもあります。
Q1-3 吃音とは、「ぼ、ぼ、ぼく」のような繰り返しのことを指すのですか
「ぼ、ぼ、ぼく」の様な語音の繰り返しは、吃音の代表的な言語症状のひとつです。しかし、吃音の言語症状は、語音の繰り返しだけではありません。語音を引き伸ばす(「ぼーーーく」)、語音がつまって出てこない(「・・・・・ぼく」)の様な言語症状も吃音の一部です。また、吃音と関連した症状に、随伴症状があります。これは、話し始める時に、吃音とともに、目がぱちぱちと動く、手を振って勢いをつけて話そうとする、貧乏揺すりみたいに足を動かすなどの体の動きが伴う(随伴する)状態のことを言います。
Q1-4 吃音と「どもり」は同じものですか
はい。「どもり」という表現はことばが吃る人を指す用語として昔から使われてきたもので、吃音は比較的新しく用いられるようになった用語のようです。「どもり」という用語は、「つんぼ」「びっこ」「きちがい」等と共に、差別的な意味合いを込めて使用されてきました。吃音をもつ人は、「どもり」と呼ばれることで非常につらい経験を重ねてこられた方が多いので、「どもり」という用語の使用は避ける必要があります。そこで、「どもり」に変わる用語として「吃音」が広く用いられるようになっています。
Q1-5 知り合いが、脳卒中に罹った後に、ことばがどもりはじめたのですが
脳卒中などの脳の損傷を受けた後に、音の繰り返しや引き伸ばし、ブロックなどの吃音と似た言語症状が出現することがあり、これを獲得性吃音といいます。獲得性吃音は、脳の発話に関する部分の損傷が原因と考えられており、幼児期に発生するいわゆる通常の吃音(発達性吃音という場合があります)とは似て非なるものと考えられます。
吃音の基本的情報
Q2-1 吃音の人の出現率はどのぐらいですか
成人の吃音の出現率は、約1%前後と言われています。この1%という数値は、おおよそどの国でも同様であると考えられています。日本の人口は約1 億2000万人ですので、日本には約120万人(石川県の人口や、福岡市の人口に匹敵)の吃音をもつ人がいると考えられる計算になります。ところで、幼児期の吃音の出現率は、約3〜5%程度と言われています。幼児の吃音の出現率に比べて成人の吃音の出現率が低くなるのは、幼児期に吃音があってもその後吃音が消失してしまう人(特に何もしなくても吃音がなくなるので、「自然治癒」と呼ばれています)が多く含まれているからだと考えられます。
Q2-2 男性の方が吃音になりやすいというのは、本当ですか
吃音の人に男性が多いというのは、本当のことです。大体男性の吃音の人は女性の吃音の人の3〜5倍いるといわれています。しかし、幼児においては吃音の出現率の男女差は見られないという報告もあり、男性の方が吃音になりやすいのかどうかについては、よく分からないのが現状といえます。
Q2-3 吃音は何歳頃に出てくることが多いですか
2〜4歳ぐらいの幼児期に出現することが多いようです。また、小学校就学前後に多く出現するという報告もあります。また、数は少ないですが、中高生や成人になってはじめて吃音が出てくる場合もみられます。
Q2-4 吃音とは、ことばだけの問題なのでしょうか?
吃音の問題は、単に言語面の問題(いわゆる「吃る」こと)だけではないと考えられます。ウェンデル・ジョンソンという著名な吃音学者は、吃音の問題を(a)話し言葉の問題、(b)話し言葉に対する聞き手の反応、(c)聞き手の反応に対する話し手(吃音を持つ人自身)の反応の3つに分けて分類しています(詳細は、こちらをご参照下さい)。つまり、吃音症状は同じであっても、周囲の人の反応が冷たくからかいを含んだものであったり、それらの反応に対して吃音を持つ人が恐怖や低い自己認識を持ったりする場合は、吃音の問題は増大していきます。これらのことは、吃音の問題を考える際は、単に言語面の改善だけに焦点をあてるのではなく、聞き手を含めたコミュニケーション全体を考慮する必要があることを示しているといえます。
Q2-5 吃音は治るのですか
吃音が治るのか、というのは非常に難しい質問です。その理由のひとつがは、吃音の人と吃音でない人の話し方は一部折り重なる部分があることがあげられます。吃音がない人でも、若干は語音の繰り返し等の吃音様の発話が見られることが知られています。また、吃音でない人でも、多くの人の前で発表する時などに緊張して声が出てきにくかったという経験をすることは一般的ではないかと思います。これらは、「吃音が治る」という状態が「吃音が全く出てこない状態」ではないことを示しています。つまり、若干は吃音の症状や吃音に対する不安などが残っていても、それは吃音でない人が持っている状態と一緒であるので問題ではないと考えられるのです。
理由の二つ目は、吃音の原因論を追究する研究の中で、吃音のある人は、「吃りやすい傾向」のようなものを持っていることが指摘されていることがあげられます。この傾向がどのようなものであるのかについては、まだ詳細は不明ですが、恐らく、心理的なプレッシャーやストレスを受けた時に発話面に影響が出やすい傾向のようなものではないかと考えられます。例えば、胃の弱い人はストレスやプレッシャーがあると胃潰瘍になりやすいように、吃音の人は吃音という形で表出されると考えられるのです。これらの傾向は、生まれ持ったものと考えられ、恐らく一生涯抱えていくものであると私は考えます。もちろん、ストレスやプレッシャーを受けないような環境整備をするとか、精神的を鍛えてにタフになることで、ストレスやプレッシャー自体を減らすことが出来れば、これらが体に及ぼす影響(吃音や胃潰瘍)も少なくなると考えられます。また、吃音の場合は、「楽に話す」等の自身の発話のコントロールする方法をを身につけることで、ストレスやプレッシャーがあっても吃音が出てきにくいようにすることも可能です。つまり、「吃りやすい傾向」があっても、吃音自体の出現を減少させることは十分可能なのです。
以上、吃音が治るのか、ということが難しい質問と私が考える理由を説明しました。以下は、私の考えで異論がある方もいらっしゃると思うのですが、私は、吃音とは、治るものではない、治す必要はない、と考えています。ただし、このことは、吃音で困っている状態を放っといて良いと言っているのではありません。そうではなく、「吃りやすい傾向」を自身の「特徴」や「くせ」として捉え、それらが悪影響を及ぼさないように日常生活の中で注意することが出来、話すことで生じる不利益がほとんどないとすれば、言語症状としては若干吃音があってもいいのではないかと思うのです。そして、自身の吃音を「特徴」や「くせ」として客観的に見つめることが出来るように、ストレスやプレッシャーに対抗する力をつけられるように、ストレスやプレッシャーがあっても発話のコントロールする方法が手に入れられるように、ことばの教室や通常学級、言友会などできちんとした支援を受けられるようにしていくことが望まれていると考えます。
Q2-6 吃音症状の波とはどのようなものですか
吃音の特徴のひとつに、吃音の症状が良い状態と悪い状態が交互に繰り返される「吃音症状の波」という現象があります。この現象は、発吃(どもりはじめ) 間もない幼児期に特に顕著に現れることが知られています。幼児期の吃音のお子さんの吃音症状の推移を見ていくと、どもり始めてからしばらくたつと、吃音症状が全く出てこなくなり、、「家の子の吃音、治っちゃったわ」と感じられる場合があります。しかし、多くの場合、またしばらくすると吃音症状が現れてきて、「せっかく治ったと思ったのに・・・」と失望される場合が少なくないのです。これは、吃音症状の波が、全く症状が出てこない場合も経験できるほど振り幅が大きい(回復力が高い)ことを表しています。
幼児期の吃音を持つお子さんと対応していくときに、このような吃音の症状の波の存在を意識し、吃音症状の波に一喜一憂しないことが必要になると考えられます。つまり、症状が良いときは、「また、しばらくすると症状が悪くなる」と気を引き締め、症状が悪いときは「いずれまた、症状が良くなるわ」と楽観的に捉えていくことが必要になると思います。そして、症状が良いときでも症状が悪いときでも、基本的にはお子さんに対する対応を変えないことが大切です。吃音症状ではなく、お話ししたい中身に耳を傾けて、会話自体を楽しむようにし、症状が良くなったからと言ってしつけを厳しくするなど急にお子さんに対する対応を変えることがないようにしていくようにすると良いのではないかと思います。
吃音症状の波は、吃音症状が軽快化していく時には、徐々に症状の良い時期が長く続くようになり、症状が悪くなってもすぐに回復するというように変化していくことが多いようです。逆に、吃音症状が進展している時は、症状の悪い時期が長くなったり、症状の良い時期でも吃音症状の軽快化がそれほど見られなくなるといった状態になることが多いと考えられます。このような場合には、小児の言語の問題を取り扱っている療育や保健関係の機関や言語聴覚士のいる病院などでご相談されることが解決の糸口になることがありますので、そのような機関での相談をご検討されることをおすすめします。
吃音の原因論
Q3-1 吃音の原因は、何ですか?
吃音の原因は、残念ながら、まだ明らかにされておりません。吃音の原因論に関する仮説が、様々な研究者から出されておりますが、どれも決定打に欠けるというのが現状です。
Q3-2 母親の育児態度が悪いと吃音になるという話を聞いたのですが
吃音を持つお子さんのお母さんの中には、自分の育児態度が悪いことが、子どもの吃音の原因であると思い、自責の念に駆られている方が少なくありません。しかし、お母さんの育児態度が悪いから吃音になるという考え方は現在では否定されています。ただし、吃音のお子さんの育児をされる場合には、吃音でないお子さんを育てる以上に配慮しなくてはいけない事項が存在することも事実です。そこで、「自分の育児態度が悪いから改める」のではなく、「子どもの吃音の問題を軽減するために、他の人には出来ない特別な育児をしている」のだと考え、ご自身の育児に自信と誇りをもって臨まれるのがいいのではないかと思います。
Q3-3 利き手を矯正すると吃音になるというのは本当ですか?
1930年代にトラヴィスという学者が、「大脳半球優位説」という学説の中で、そのような考え方を述べたのですが(詳細については、こちらをご覧下さい)、現在では、そのような考え方は否定されています。 1930年代にトラヴィスという学者が、「大脳半球優位説」という学説の中で、そのような考え方を述べたのですが(詳細については、こちらをご覧下さい)、現在では、そのような考え方は否定されています。
吃音の指導・支援
Q4-1 専門的な吃音の指導を受けると、吃音は治りますか
これは、とても難しい質問です。なぜなら、「吃音が治る」ということがどういうことを指すのかについては、人によってかなり異なるからです。
ただ、吃音の言語症状に関して言うと、発吃(吃り始め)から間もない幼児期に指導を開始した場合には、言語症状(特に、力の入ったブロック等)はほとんど見られなくなる場合が多いと考えられます。また、学童期に吃音の言語指導を行っていた場合においても、発話時に若干の不自由感を感じることはあったとしても、周囲の人のからかいなどの反応も含めて日常生活においてほとんど支障がない状態まで言語症状の改善が見られる場合が多いと考えられます。思春期、成人期から吃音の指導をについては、小学校までの吃音に比べると、なかなか指導の効果が出てにくいと考えられますが、それでも粘り強く指導を続けることで言語症状にかなりの改善がみられることが知られています。このように、吃音の言語指導を受けることで、(程度の差はあれ)吃音の言語症状の軽減が図れることは事実であり、吃音の言語症状で悩まれている方にとっての解決の一方法であると考えます。
Q4-2 吃音の原因が分からないのに、指導を行うことは可能なのですか
確かに吃音の原因はいまだ不明ですので、現在の吃音指導が吃音の原因論に基づいたものではないことは紛れもない事実です。しかし、これまでの研究で、吃音の悪化や維持、もしくは改善に関係した要因については、かなりの部分が明らかになってきていることも確かです。また、吃音の言語症状を「楽な」話し方に改善させていく方法についての研究や実践も数多くなされています。吃音の指導(もしくは支援)は、これらの研究や実践成果に基づいて行われており、実際に言語症状の軽減といった効果が多数確認されております。
幼児期の吃音
Q5-1 幼児の吃音の指導とは、どのようなことをするのですか
吃音の指導法は、様々な方法があり、一概に言うことは出来ません。そこで、ここでは、私の行っている方法について簡単に紹介したいと思います。私は、幼児の吃音の治療を行う際には、言語や運動機能といった側面と、情緒的な側面の2つの側面についての対応が必要になってくると考えています。具体的には、お子さんが楽に話せるような環境づくりについて、言語・運動面(話すときの速度や、発話の長さや複雑さをお子さんの負担の少ないものとしていく等)、情緒面(発話の際の心理的なプレッシャーを取り除く等)の双方から検討していきます。また、必要に応じて、直接的な言語指導や、遊戯療法などの手法を用いることもあります。ただし、お子さんの持つ吃音のタイプや家庭等の事情により、指導法は大きく変化していきますので、以上はあくまでも一例として考えていただければ幸いです。
学齢期の吃音
Q6-1 学童期の吃音と幼児期の吃音とは何がちがうのでしょうか
一般的には、学童期になると、自身の吃音を意識するようになり、話す前に自身が吃ることを察知してしまう「予期不安」という状態が出てくるようになります。それに伴い、発話の際に発声発語器官(のど、口等)に力が入って、ブロック(Q 2参照)や随伴運動が増大するようになります。また、この時期には、自身が「他の子みたいにうまく話せない」「自分だけ他の人と違う」という意識が芽生えるようになり、吃音を恥ずかしいことと考え、人前で話すことを避けるようになる場合も少なくありません。ただし、これらの変化は、お子さんの持つ吃音のタイプ、お子さんの性格、周囲の対応、吃音の指導を受けた経験の有無などによって大きく異なります。中には、幼児期にこれらの特徴を既に備えているお子さんも言えば、小学校高学年になっても吃音についての意識が全くないお子さんもいらっしゃいます。
Q6-2 学齢期の吃音の指導とは、どのようなことをするのでしょうか
実際には、Q18で述べたように、お子さんの状態を見て指導方針は決定されるのですが、私の考える学齢期の吃音指導の一例を示すと以下のようになります。
- 環境調整(家庭環境の調整、学校環境の調整)
- 吃音症状の軽減に目指した直接的指導(「流暢に(吃らないように)」ではなく、「楽に」話すことを狙う)
- カウンセリング的指導(吃音についてオープンに話せる場所の確保。吃音を持つ仲間同士のグループ指導を含む)
- 発話・コミュニケーションに関する指導(単に「吃らない」ことを狙うのではなく、効果的な発話・コミュニケーションをする方法を学習したり経験する。模擬面接などを含む)
実際には、お子さん本人や、保護者の方や学校の先生の希望や、吃音の言語症状、心理的な問題の大きさなどを考慮して、これらの方法を組み合わせた指導計画を立てるようにしています。
Q6-3 学齢期の吃音を取り扱っている専門機関にはどのようなものがありますか
吃音を取り扱っている専門機関としてまずあげられるのが、小中学校に設置されている言語障害児通級指導教室(ことばの教室)です。ことばの教室は、地域の学校に設置されているため学級や地域との連携が取りやすい点、単に吃音の言語症状の軽減だけを目指すのではなく教育的な観点から長期間にわたる幅広い支援が得られやすい点など、吃音の指導や支援にとって望ましい条件が広くそろっていると思います。これらのことから、ことばの教室は、吃音をもつお子さんの指導や支援を検討する際の第一の選択肢となると考えられます。また、総合病院など比較的大きな病院や療育機関等には、言語聴覚士ということばのリハビリの専門家がおり、吃音の指導支援も行っております。ただし、言語聴覚士の中には、小児だけとか成人だけを扱う方や、吃音の指導支援は行っていないという方もいらっしゃいますので、事前に吃音の相談を受け付けているか確認する必要があります。あと、教育や医療系の大学の中には、附属の相談室やクリニックを併設している場合があり、吃音の指導や支援を受け付けている場合があります。これらは、無料、もしくは比較的安価で利用出来る場合がほとんどですので、近くにそのような機関がある場合にはご利用になれると思います。
Q6-4 うちの子は、吃音の悩みは全然言わないのですが、まだ吃音の問題に気づいていないと考えていいのでしょうか
そのようなお子さんがいることは十分考えられます。しかし、中には、「はずかしいから」とか「言っても分かってもらえないから」と言うふうに考え、吃音の問題で悩んでいても相談すら出来ないお子さんもいるようです。従って、吃音の悩みを全然言わないからといって吃音の問題に気づいていないとか、悩んでいないと判断することは、早計であるといえます。
学級での対応
Q7-1 吃音の児童がいる場合、ことばの教室の先生に相談した方がよいのですか
ことばの教室は、小中学校に設置されており、担任の先生は比較的紹介しやすい専門機関であると思います。しかし、ことばの教室に通うためには、授業の一部を抜け出して指導を受けなくてはいけないため、ことばの教室を紹介するのに抵抗がある先生や保護者の方もいらっしゃるのではないかと思います。また、吃音をもつお子さんが全てことばの教室に通わなければならないかというと、そのようなこともありません。
私は、ことばの教室に通うかどうかはともかくとして、保護者の方にことばの教室のことをご説明した上で、ことばの教室の先生に吃音のお子さんのことをご相談されるのが良いのではないかと思います。確かに、ことばの教室に通われるかどうかは、最終的にはお子さん本人と保護者の方が決めることですし、全ての吃音をもつお子さんがことばの教室での指導や支援が必要なわけでもありません。しかし、ことばの教室に通った方が良いかどうかの判断をするためには、ことばの教室での専門的な評価に基づいて行う方がよいと考えられますし、仮にことばの教室に通わないということになっても、学級で必要な指導や支援の方法についての意見をことばの教室の先生からいただくことは出来るのではないかと思います。
Q7-2 吃音の児童が授業中などに発表する際にはどのような配慮をすればよいですか
吃音のお子さんの中には、挙手して発表する場面で答えは分かっているのに、「吃ってしまうかもしれないから」という理由で挙手するのを止めるお子さんがいます。また、出席番号順等で順番に指名していく際に、「あと、何人であたってしまう。吃らないで答えられるかな、吃ったらどうしよう」というように心配し授業の内容が身に入らないお子さんもいます。
これらの際に出来る配慮としては、「はい、いいえ」や選択肢で答えられる質問を用いたり、板書で答えたりするなど、比較的平易な発表場面や口頭以外の方法による発表場面を積極的に取り入れるなどがあげられます。あるいは、特に自信があって是非発表したい挙手の方法(人さし指をあげて一番の形にするなど)をクラス共通のきまりとして作り、自信がある時(吃音の不安がない時)に優先的に指名するなどの方法も考えられます。さらに、吃音のことをお子さんとフランクに話し合える関係が出来ているようでしたら、吃音がある子どもと事前に、どのような質問だったら答えられるかについて話し合っておき、答えられそうな質問の時に優先的に指名するという方法も考えられます。 なお、挙手ではなくて先生の方から指名して発表する場合についてですが、前述したように出席番号順などで順番に指名していく時には、自分の発表しなくてはいけない場面がおおよそ予測がつくため、不安を感じてしまうことが多いようです。そこで、ランダムに指名をする方法をとると、自分の順番の予測がつかなくなるので、自分の指名される順番を待つ際の不安を軽減することが出来るようです。
Q7-3 国語の朗読の時につっかえてしまうのですが、どのように指導すれば良いでしょうか
吃音のお子さんの中には、朗読のようにあらかじめ決められていることを言うことが苦手なお子さんがいます。これらのお子さんの中には、「朗読で吃って恥ずかしい思いをするのではないか」という強い不安を感じている場合も多く、そのことが原因で授業の中身に身が入らなかったり、授業を受けること自体が苦痛になることもあります。
吃音の特徴の一つとして、他の人と一緒に朗読する(斉読)とほとんど吃音が生じないということがあります。一人で朗読する時に相当重度な吃音が出ている場合でも、斉読場面では吃音頻度が激減することが知られています。そこで、このことを応用し、(1)朗読する時に、さりげなく、先生が一緒に読んであげる(小さな声でつぶやくようにいうだけでも効果があります)、(2)朗読させる時に、1人ずつ朗読させるのではなく、2人もしくはそれ以上のグループ単位で斉読をさせるようにする、などの方法を取ることが有効です。特に、(2)の方法は、「2人で心を合わせて声を揃えて一緒に読んでいこうね」というような教示を加えると、吃音がない子どもにとっても高い教育的効果も狙えるのではないかと思います。なお、(1)の方法をとる時は、吃音のあるお子さんにだけ先生が一緒に読んであげると、「私だけ、先生が一緒に読んでくれて、やっぱり私はおかしいのかな」とか、「あいつだけ、先生が一緒に読んでいるのは変だ」という意識を子どもに与えてしまう場合があるので、吃音がある以外のお子さんが朗読している時にも同じように一緒に読んであげたりする配慮が必要になります。もしくは、吃音のことをお子さんとフランクに話し合える関係が出来ているようでしたら、吃音がある子どもと事前に、「あなたは、話す時に少し話しにくい時があるようだから、楽に話せるように、先生が一緒に読んであげようと思うんだけどいいかな」等という形で了解を得るという方法も望ましい方法です。
Q7-4 吃音のことでからかわれている児童がいます
吃音をもつお子さんは、吃音のことで友達からからかわれたりすることが少なくなく、それがいじめなどに発展することも少なからずあるようです。吃音をもつ成人の方の手記などを読むと、「小学生の時に、友達からからかわれた後に、吃音を意識するようになり、吃らないように意識したら吃音が余計に悪くなった。」「友達からからかわれても、何も言い返せず悔しい思いをした。吃音があるから自分は駄目なのだと痛感した。」等と、吃音へのからかいが吃音の悪化や自己肯定感が低下する契機となった事例が多いことに気づきます。そこで、吃音のことでからかわれているお子さんが、学級にいらっしゃる場合は、出来るだけ早急にその状態の解消を目指した取り組みを図っていく必要があると思います。
どのような取り組みを行うかについては、ケースバイケースで考えなくてはいけない場合が多く一概に言うことは出来ません。そこで、以下には、取り組みを考えていく際の原則的なことについて述べていきたいと思います。吃音のことでからかわれているお子さんに対する対応としては、(a)からかわれたお子さん(吃音をもつお子さん)、(b)からかったお子さん、(c)それ以外のお子さんの3者に対する取り組みが必要になると思います。まず、(a)からかわれたお子さんに対しては、吃って話してしまうのは、お子さんの努力が足りないことが原因でないことや、悪いことではないこと、特徴や「くせ」の一つであり別に恥ずかしく思うことはないこと(例えば、「背の高いこと低い子がいいるように、話すのがすらすらと言える子と言えない子がいるんだよ。背の低い子が別に悪いわけではないように、話がすらすらと言えなくても別に悪いわけではないんだよ」等)を伝えることが必要になると思います。そして、悪くないのにからかうということは、良くないことだということを確認した上で、お子さんにからかわれたお子さんに対してどのように対処して欲しいかを尋ね、お子さんと相談しながらからかったお子さんへの対処を考えるとよいのではないかと思います。続いて、(b)からかったお子さんに対しては、からかってはいけないと叱るだけではなく、吃音は自分の力ではどうしようもないことで、そのことを取り上げてからかうのはフェアでないことを伝える必要があると思います。そして、からかうお子さんにもからかってしまった理由を聞き、吃音のあるお子さんに非がある場合(もちろん、吃音以外の面で)にはそのことは吃音のあるお子さんに伝えるようにするなど中立的な立場を立ちながらも、吃音の面でからかうことはそれらとは次元が異なることであるということを強調する必要があると考えます。最後に(3)それ以外のお子さんに対してですが、私は、この(3)に対する対応も学級からからかいをなくすためには、非常に有効な方法であると思います。つまり、吃音のことでからかうことはおかしいことだ、という学級の雰囲気を作ってしまうと、からかうお子さんも出てきにくくなると考えるからです。これを行うためには、例えば、吃音の子の了解を取った上で吃音のことを学級会等で取り上げる、話し方ではなくて話す内容に注目するように学級内で指導を行う等の対応が考えられます。また、学級の先生の吃音のあるお子さんに対する対応も、非常に重要になってくると思います。先生が率先して吃音のことをからかったりすることは論外としても(残念なことに、そのような対応をされる先生も一部にはいらっしゃるようです)、先生が吃音の子が発表している時に、心配そうな顔や、イライラしたような顔をして聞いていると、他の子どもたちもその雰囲気を察してしまうのではないでしょうか。そこで、先生自身が、話し方ではなく話の中身に注目して、ゆったりと最後までお話を聞いてあげる等といった、吃音があるお子さんとの接し方を考えてみることも必要になるではないかと考えます。
Q7-5 学級の子どもから、「どうして○○くんは、話し方がへんなの」と質問されました
小学校低学年位になると、周囲のお子さんも吃音をもつお子さんの話し方が、自分たちと違うことに気づき、「どうして、○○くんは、話し方がへんなの」とか「○○くんは、どうして『ぼ、ぼ、ぼ』ってことばを繰り返すの」というような疑問をいだくようになります。
これらの質問に対しては、例えば、「○○ちゃんは、話す時に『ぼ、ぼ、ぼ』って繰り返すことがあるけど、それは○○ちゃんの話す時のくせなんだよ。」とか、「かけっこが速い子と遅い子がいるみたいに、○○ちゃんは話す時に少し言いにくい時があるんだよ。」等と、吃音のことを「くせ」や「特徴」の一つで、おかしいことではないということをお話する必要があると思います。そして、「○○ちゃんは、話す時はいつも一生懸命お話しているし、面白いことをいつも教えてくれるよね。だから、○○ちゃんが言葉を繰り返して話している時も、最後までお話を聞いてあげてね」とか、「○○ちゃんは、お話する時は少し言いにくい時があるけど、なわとびではとっても得意でみんなもすごいって思っているよね。」などと話している態度や内容、他の得意なことがあることを気づかせるような話しかけをすると良いのではないかと思います。
Q7-6 学級の友達から、「どうして○○くんは、ことばの教室に通っているの」と質問されました
吃音をもつお子さんは、一見どこにも問題がないように見えるので、授業中に抜け出してことばの教室に通っていることに疑問を持つ周囲の友達がいてもおかしくはありません。
これらの質問に対しては、例えば、「○○くんは、時々『ぼ、ぼ、ぼ』って話し始めるのが言いにくい時があるでしょう。ことばの教室では、『ぼ、ぼ、ぼ』ってしんどい話し方にならないように、楽に話せる話し方の勉強をしているんだよ」とお子さんに分かりやすい形でことばの教室での活動内容について説明することが良いのではないかと考えます。そして、「○○くんは、ことばの教室でとても一生懸命ことばのお勉強をしているんだよ」とか、「ことばの教室のお勉強はとても楽しいらしいよ」等と、ことばの教室に通うことがおかしなことや悪いことではないことを強調することが必要になると思います。ことばの教室で行っている内容について、吃音をもつお子さんに発表してもらう時間を設けたり、ことばの教室での活動をビデオにとって教室で視聴したりといった活動も、効果的な場合があります。
ただし、これらのことは、どのようにことばの教室のことを他のお子さんに紹介したら良いかについて、吃音をもつお子さんと事前に相談をしてから行った方が、望ましいと考えられます。ことばの教室での活動を学級の友達に紹介したいと思うお子さんも入れば、あまり広く紹介したくないというお子さんもいると思います。これらのお子さんの気持ちも配慮していくことが大切です。
Q7-7 学芸会の劇の主役に、吃音がある児童が立候補しました。そのまま劇の主役にしてもよいのか不安です
学芸会等の劇の主役に、吃音のあるお子さんが立候補した時に、学級担任の先生方は、主に次のような3点について不安を感じるのではないかと思います。一つは、本番中に吃ってしまって失敗経験となるのではないかということ。二つめは、本番中にどもってしまうことで、クラスで準備してきた劇が失敗してしまい吃音がある子以外にも迷惑がかかるのではないかということ。三つは二つめで指摘したように劇が吃音がある子が原因で失敗してしまったために吃音のある子と他のクラスのメンバーとの間の関係が悪くなってしまうのではないかということです。このように、吃音のあるお子さんに劇の配役をつけることには、いくつかの不安がつきまとうものだと思います。しかし、吃音があり、話すことが苦手な吃音を持つお子さんが、このような場を与えられて、一生懸命練習に取り組み、多少本番で吃ることがあったとしても、最後まで練習どおりに演じきるお子さんがたくさんいると思います。そして、劇の経験が、自分自身や生活全般に自身を持って活動に取り組めるようになることきっかけとなることがあることも報告されています。
吃音があっても、なくても劇の主役に立候補するということは大変な勇気がいることだと思います。言葉が出て来にくい吃音のお子さんにとってはその勇気はさらにふくらむことと考えられます。吃音があるお子さんが立候補したときには、少なくとも、言葉が出てきにくいからということで対象から除外するのではなく、その勇気を認め、他のお子さんと対等に扱っていく必要があると思います(その結果、選からもれてしまうこともあると思いますが、それは致し方ないことだと思います。)。その結果、学芸会の主役に選ばれた場合は、台詞が吃ってしまってうまく言えないという場面が出で来ると考えられますが、その場面についてどのようにしたら良いかをお子さん本人と話し合い、必要に応じて台本自体を代えてみたり、もしくはその時に台詞が言いやすいような工夫(ゆっくりと読むとかそっと読むとかという方法が有効な場合が多いと思いますが、本人がこうしたら言いやすいというものがあったらそれを採用しても良いと思います)を加えるようにします。そして、何よりも必要と思うのは、学級の他のメンバーに対して、吃音がある中で、劇の主役をするということは大変なことであり、そのようなことにチャレンジしようとしているこのお子さんは非常に勇気と努力がいることであるということや、途中でどもってしまうことがあっても、それは劇自体の失敗にはならないことを伝えると共に、劇終了後も、このお子さんが若干吃りながら台詞を話したとしても、それ以外の演技面やそれに至る練習での努力などを評価し、他のお子さんに対しても、多少この子は吃ってしまったが、劇全体としては成功で先生は満足しているということなどを伝えていくことが必要だと思います。
ことばの教室での対応
Q8-1 ことばの教室では、どのような指導や支援をするのですか
ことばの教室で行う指導や支援は、以下の様なものがあります。
- 環境調整(家庭環境の調整、学校環境の調整)
- 吃音症状の軽減に目指した直接的指導(「流暢に(吃らないように)」ではなく、「楽に」話すことを狙う)
- カウンセリング的指導(吃音についてオープンに話せる場所の確保。吃音を持つ仲間同士のグループ指導を含む)
- 発話・コミュニケーションに関する指導(単に「吃らない」ことを狙うのではなく、効果的な発話・コミュニケーションをする方法を学習したり経験する。模擬面接などを含む)
実際には、お子さん本人や、保護者の方や学校の先生の希望や、吃音の言語症状、心理的な問題の大きさなどを考慮して、これらの方法を組み合わせた指導計画を立てて指導が行われることが多いと考えられます。
Q8-2 ことばの教室において、吃音の指導や支援を行う必要があるかどうかの判断はどのようにしたらよいでしょうか
ケースバイケースですが、以下のようなことを考慮して決める必要があると思います。
- 発話の問題(吃音の言語症状)の程度(特に、発話速度と発話時の緊張の有無)
- 本人の吃音に対する意識
- 指導に対する動機の有無や程度
- 本人や保護者の希望
Q8-3 学齢期のお子さんに対する個別の指導計画を考えるときの、短期目標、長期目標の立て方と具体的な目標の例にはどのようなものがありますか
吃音の状況や学年、性格、環境、本人や家族の希望などを通して総合的に判断して決めていく必要があると思います。私が、判断する基準としているのは、以下のようなものです。
- 吃音自体が消失する可能性(低学年の場合)
- 発話の問題(吃音の言語症状)の程度
- 付随する問題等の有無
- 吃音に対する本人と周囲の思い等
Q8-4 小学校の中学年や高学年になってから吃音の問題が生じたお子さんに対する指導支援ははどのようにすれば良いですか
吃音の問題はその、ほとんどが小学校入学前までに出現することが多いのですが、中には小学校中学年以降に吃音が出現することもあります。そのような場合も基本的には、幼少期から継続する吃音のある子どもへの対応に準じた対応をとることが有効と考えられます。ただし、吃症状が何故その時期に出現したのかについては、検討を加える必要があると思います。また、小学校中学年以降に吃音の問題が出現した場合は、特に情緒面の対応について考慮する必要があると思います。さらに、思春期に入ることによる様々な問題についても配慮が必要となります。
Q8-5 ことばの教室において、吃音の指導や支援を通級を終了するかどうかの判断基準にはどのようなものがありますか
ケースバイケースですが、以下のようなことを考慮して判断する必要があると思います。
- 発話の問題(緊張の少ない繰り返しや引き伸ばし主体の発話となっているか、吃音の出現頻度が少なくなっているか等)
- 情緒面や環境面、認知・運動・言語発達面の改善が見られるか
- 発話速度等の面が安定しているか
- 本人の吃音に対する意識の状態はどうか
- 保護者の心配がある程度解消されているか 等
実際には、いきなり終了するのではなく、徐々に間隔を空けていくようにし、問題があったときにはいつでも連絡を取れるような体制を作るように配慮する必要があります。

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