保護者の方へ
このページでは、お子さんの吃音の問題で悩まれている保護者の方に、吃音(きつおん: ことばがどもること)の特徴と、ご家庭での吃音があるお子さんに対する接し方について説明しています。このページをご覧になる保護者の方の中には、我が子の吃音の問題に、悩まれたり、不安をお感じになったりされている方も多いと思います。そのような場合に、このページに書かれていることをご参照いただければと思います。
保護者の方の接し方のまずさが、お子さんの吃音の問題の原因ではありません
吃音があるお子さんの保護者の方の中には、「自分の育て方がまずかったから、我が子が吃音になった」と思われ、ご自身を責められている方がいらっしゃるかもしれません。また、他のご家族やご親戚、ご近所の方などから、あなたの育て方のまずさが、お子さんの吃音の原因だというように、指摘されて傷ついていらっしゃる方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、保護者の接し方のまずさが原因で、お子さんに吃音が生じるわけでは決してありません。
吃音の原因は、まだ完全には解明されていないのですが、恐らくは、お子さんの持っている素因的な要因と、環境の要因がある条件で組み合わさった時に生じるのではないかと考えられます。同じようにメカニズムで生じると考えられているものには、アトピー性皮膚炎や、生活習慣病などが考えられます。例えば、アトピー性皮膚炎の場合は、お子さんの持っている特定の物質(ハウスダストやダニなど)に対する過敏性という素因的な要因と、生活環境の中のこれらの物質の存在という環境の要因が組み合わさった時に出現すると考えられます。また、生活習慣病の場合は、高血圧や糖尿などになりやすい素因的な要因と、食塩や脂肪の多い食事や運動不足といった生活習慣という環境の要因が組み合わさった時に出現すると考えられるのです。
吃音の場合、何が素因的な要因で、何が環境的な要因となるのかは、まだ不明のところが多いのが現状です。しかし、これまでの研究の結果からは、素因的な要因としては、言語・認知・運動発達の遅れや偏りや、情緒・情動の不安定さなどがあげられるのではないかと考えれています。また、環境的な要因としては、お子さんの言語・認知・運動発達に比して速すぎたり複雑すぎる周囲の人の発話や生活の様子(たとえば、お子さんの言語発達に比して速すぎたり複雑すぎる発話環境、お子さんの認知・運動発達に比して高度すぎる毎日の生活環境など)や、お子さんの情緒・情動に負担をかける環境(たとえば、お子さんの情緒・情動の状況に比して慌ただしすぎたり、プレッシャーとなる事柄が多い環境など)があげられるのではないかと考えられています。
吃音の問題は、多くの場合、徐々に軽くなっていきます
吃音の問題は、多くの場合、徐々に軽くなっていきます。特に、幼児期の吃音の場合、少なくとも吃音がある幼児のお子さんの半数のお子さんは、特に特別な指導や支援をしなくても、小学校に入学するぐらいまでに吃音の問題が見られなくなることが知られています(これを自然治癒といいます)。
また、小学校に入って吃音が引き続き見られるお子さんでも、ことばの教室や言語聴覚士の先生方の適切な指導・支援を受けることで、多くの場合、身体の緊張を伴う重い吃音があまり見られなくなったり、吃音が出にくいように身体の緊張をうまくコントロールしながら話す方法を身につけたりして、日常生活の中でそれほど大きな支障なく過ごせるようになるようになります。
なお、小学校の時期に大きな支障なく過ごせるようになった子どもであっても、思春期となる中学校、高校の時期や、就職活動の時期などに上手く話せないことに悩んだり不安を感じたりする場合があります。しかし、多くの場合、一時的にこのようなことが見られても、これらをうまく乗り越え、吃音に対する不安や悩みは再び軽減し、吃音の言語症状も徐々に軽快化していくと考えられます。
お子さんの吃音の問題を軽くするには、お子さんの特性に合わせた「特別な環境」を整えることが効果的です
前述したように、これまでの研究の結果から、吃音があるお子さんには、言語・認知・運動発達の遅れや偏りや、情緒・情動の不安定さなどの素因的な要因があるお子さんが多いことが示唆されています。このことは、お子さんの吃音の問題を軽くするためには、これらのお子さんの特性に合わせた「特別な環境」を作ることが効果的であることを示しています。
吃音があるお子さんの特性に合わせた「特別な環境」には、以下のようなものが考えられます。
- お子さんとお話をする時に話しかける大人の側が「ゆっくり」、「ゆったり」とした話し方で話す。
- お子さんと話す際に、お子さんの話す速さと同じが、少しゆっくり目ぐらいの速さで話す。
- 子どもが話し終わってから、一呼吸置いてから子どもに話しかけるようにする(発話と発話の間に十分間を取りながら関わる)
- 子どもがお話をしている時は、相づちやうなづきなどをしながら、出来るだけ最後までお話を聞く。子どもがお話をし終えるまで、大人の側から、別の話題などを話さないようにする。
- 家事などで忙しい時は、「あとで、お話を聞くから待っててね」などと言い、あとで必ずお話を聞く時間を設ける。
- 兄弟同士で、保護者に対して先を争うように話しかけるような状況がある場合は、「順番に話す」というルールを設け、発話の最中に話を割り込まれることがないようにする。
- 子どもに対して「ゆっくり」、「落ち着いて」などの声かけは極力控えるようにする。
- 生活全般をゆったりと落ち着いたものにする
- 毎日の生活にゆとりをもたせるために、早寝・早起きなどの規則正しい生活習慣の確立や、朝や夕方などの忙しくなりがちな時間帯の過ごし方に気をつける。
- 休日や放課後などに、予定(お稽古ごとなど)を入れすぎないようにする。
- 短い時間で良いので、毎日の生活の中に、子どもと保護者とで一対一でじっくりとかかわる時間を設ける(たとえば、夜寝る前や、お風呂の中、学校や園から帰ってきておやつを食べる時間など)
お子さんが吃音の問題に気づいている時は、吃音のことをタブーにしないで、フランクに話し合える関係を作ることが大切です。
多くの保護者の方は、お子さんが自身の吃音のことを話してきたときに、動揺して、どのように話してよいか分からず、ついつい曖昧に、ごまかすようにして話を終わらせてしまうようです。しかし、このような対応は、お子さんの側からすると、「このことは、話してはいけないことなんだ」、「このことを話すとお母さんを困らせてしまうんだ」というメッセージを与えてしまうことがあり、お子さんが吃音の子とを誰にも相談できず、1人悩み苦しむ状況を作ってしまう可能性があります。そこで、お子さんが、自身の吃音の問題に気づいている場合は、吃音のことをタブーにしないで、フランクに話し合える関係を作ることが大切になります。吃音のことをフランクに話すためには、私は、普段から、以下にあるような準備や心構えをしておくとよいでしょう。
- 「吃音の話し方」は、「くせ」のようなものであり、悪いことやいけないことではないことを伝える。背が高い子と低い子がいるように、話し方にも色々な話し方があるということを話すことも有である。
- 子どもが吃音の話をしてきた時のことを想定し、あらかじめ、どのように対応すればよいか準備をしておく。
- 普段から、吃音以外の悩みの相談などにも良く応じるようにし、吃音のことで悩んだときに相談することを子どもが躊躇しないような関係を作っておく。
小学校に設置されている「ことばの教室」や療育センターや病院の「言語聴覚士」の先生方が、お子さんの吃音の問題の相談に乗ってくれます
吃音の問題は、学齢期のお子さんであれば、小学校に設置されている「ことばの教室」で教育相談や通級指導(授業の一部や放課後の時間に週1回1時間程度、吃音の軽減や改善のための指導や支援を受けることが出来る制度)を受けることが出来る場合があります。また、幼児のお子さんや、学齢期のお子さんで近くの小学校にことばの教室が設置されていない場合は、療育センターや病院のリハビリテーション科や耳鼻科など(病院によって異なります)の中には、言語聴覚士という言葉のリハビリの専門の先生による吃音の軽減や改善のための指導や支援を受けることが出来る場合があります。ことばの教室については、担任の先生や、各小学校の特別支援教育コーディネーターの先生、あるいはお住まいの市区町村の教育委員会にお尋ねいただければと思います。また、療育センターや病院については、市区町村の保健センターや各都道府県の言語聴覚士会などにお尋ねになると良いでしょう。

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