吃音のある小児の包括的検査バッテリー開発

金沢大学人間社会研究域学校教育系小林宏明研究室では、2012年度から2015年度の4年間に渡り、科学研究費補助金(基盤研究(B), 研究課題番号24330263)の研究助成を受け、国内外の吃音研究者の先生方と共に、「吃音がある幼児・児童・生徒の包括的検査バッテリーの開発」という研究を行うことになりました。この研究に関するご感想やご意見ありましたら、お知らせいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。  

研究組織

  • 小林宏明(金沢大学人間社会研究域学校教育系)(代表研究者)
  • 川合紀宗(広島大学大学院教育学研究科)(分担研究者)
  • 原由紀(北里大学医療衛生学部)(分担研究者)
  • 見上昌睦(福岡教育大学教育学部)(分担研究者)
  • 前新直志(国際医療福祉大学保健医療学部)(分担研究者)
  • 宮本昌子(目白大学保健医療学部)(研究分担者)
  • Vanryckeghem, M. (University of Central Florida, Department of Communication Sciences and Disorders)(協力研究者)

はじめに

  • 吃音がある人の臨床においては、これまで、吃音の言語症状(どもる話し方)の軽減・改善に主眼がおかれてきた。しかし、近年、上述したような吃音の原因論等に関する研究の進展を受け、単に吃音の言語症状だけでなく、言語・認知・運動発達や吃音に対する認知・行動・情緒、実生活における活動・参加の状況、吃音がある人を取りまく環境要因等の、吃音の出現と進展に関与すると考えられる様々な要因について包括的・総合的に評価・臨床を行う「多要因・多面的モデル(Multi-factorial/ Multi-dimensional Models)」が提唱され、吃音臨床の新しい方向性を示すものと多くの研究者、臨床家の支持を受けている。そして、このことに伴い、吃音の検査法開発においても、多要因・多面的モデルに基づく評価・臨床を行うのに必要不可欠な、(a)吃音の言語症状の検査、(b)吃音に対する認知・感情・態度の検査、(c)活動・参加、環境因子、環境因子等の検査等のEvidence Based Practice(EBP; 根拠に基づく臨床実践)を担保しうる標準化されたデータに基づく検査が開発されている。
  • ところで、我が国における吃音がある人に対する臨床は、幼児期及び青年期以降は言語聴覚士が、学齢期においては公立小・中学校に設置されている言語障害通級指導教室(ことばの教室)担当教員によって主に行われている。我が国における吃音がある人への臨床においては、我が国では吃音がある人の心理的側面に関する研究が多く行われてきたことかもあり、これまでも吃音がある人を取りまく環境や、吃音がある人の認知・感情・態度といった吃音の言語症状以外の側面に対する臨床実践が重視されてきた経緯がある(牧野,2007等)。しかし、これらの実践は、実態把握や臨床効果の測定に利用出来る妥当性や信頼性が担保された検査がない中で行われているため、昨今の臨床で求められるEBPが担保されたものとは言いがたいのが現状である。

目的

  • 本研究は、我が国において多要因・多面的モデルに基づくEBPが担保された臨床を行う上で必要不可欠な吃音に関する諸検査を整備することを目指し、(a)吃音の言語症状、(b)吃音に対する認知・感情・態度、(c)活動・参加及び環境要因に関する3つの検査を開発する。
    • (a)については、1981年に日本音声言語医学会吃音小委員会が開発した吃音検査法〈試案〉を改訂した検査で、吃音がない幼児等の標準データの収集が既に終了している改訂版吃音検査法(原ら, 2011)について、吃音がある幼児等の標準データの収集・分析し、吃音がある幼児等と吃音がない幼児等の鑑別や、吃音がある幼児等の吃音の言語症状の重症度判別が行えるような評価尺度の開発を行う。
    • (b)については、Bruttenと本研究の研究協力者であるVanryckeghemが開発したBehavior Assessment Battery for School-Age Children Who Stutter(BAB)BABの日本語版を作成すると共に、吃音がない、吃音がある幼児等の標準データを収集・分析し、吃音に対する認知・感情・態度の問題の有無やその深刻度の評価が行えるような評価尺度の開発を行う。
    • (c)については、小林が、科学研究費補助金(2009〜2011年度, 若手研究(B))を得て行ったICFに基づく学齢期吃音評価プログラムの研究で開発した評価バッテリーの活動・参加及び環境要因に関する検査項目を再構成した活動・参加及び環境要因検査を作成すると共に、吃音がない、吃音がある幼児等の標準データを収集・分析し、活動・参加及び環境要因に関する問題の有無やその深刻度の評価が行えるような評価尺度の開発を行う。

お知らせ

2014年10月23日
「吃音講演会 & 吃音検査法講習会」(2014年11月15日, 広島大学)のご案内
2014年9月12日
「吃音のある成人の小学校生活に関する実態調査」のレポートが完成しました
2014年9月10日
Martine Vanryckeghem 教授講演会が行われました
2014年8月27日
Martine Vanryckeghem 教授を交えての研究協議会を行いました
2014年4月23日
平成26年年度上半期「ST・ことばの教室担当者向け吃音臨床講習会」(広島大学川合紀宗先生主宰)のお知らせ
2014年3月19日
2013年度「吃音がある幼児・児童・生徒の包括的検査バッテリーの開発」活動報告
2012年3月17日
2012年度「吃音がある幼児・児童・生徒の包括的検査バッテリーの開発」活動報告