吃音改善のための取り組み

吃音改善のための取り組み  
  • 吃音の改善を図るための方法については、これまで、様々なものが提唱されています。しかし、いまだ吃音の原因が不明なことや、吃音がある人同士の個人差が大きく全ての吃音がある人に有効な方法が見いだしにくいことなどもあり、これらを包括・統合する吃音改善の標準的な方法は、必ずしも確立されていないのが現状です。 しかし、近年、まだまだ不十分なところが多いものの、これまで個々に提唱・発展されてきた様々な吃音改善のための方法を、包括・統合しようとする試みがされるようになってきました。そこで、ここでは、これらの方法を私なりに整理したものをご紹介したいと思います。 ここにあげる方法は、必ずしも、全ての吃音がある方の賛同を得られるものではないと思います。また、ここにあげる方法の有効性についての検証も今後行って行く必要もあります。この点については、語批評やご意見をいただければと幸いです。よろしくお願いいたします。
 

私の考える吃音改善の目的

 
  • 吃音改善の目的は、吃音がある人々で様々であると思います。例えば、究極的には「吃音が全くでないようになる」ことを吃音改善の目的に据えられる方もいらっしゃると思います。また、「自分の言いたいことが言えれば、多少吃音が出ても構わない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。吃音改善の目的をどこに置くかは、吃音がある方お一人お一人の価値観や人生観に根付いたものであり、どのような目的が望ましいかを論じることはあまり生産的ではないと思います。 しかし、ものごとを進めていくには、「自分がどこに進んでいくべきか」という目的を定める必要があります。そこで、全ての方の賛同を得られないことは十分承知した上で、私(小林宏明)が考える吃音改善の目的を以下に述べたいと思います。ただし、これまで再三述べているように、これは、あくまでも、「私がそのように考える」ということであり、「以下のような考え方でないといけない」ということではないことをご了解いただければ幸いです。
  吃音改善のための取り組み2    

発話やコミュニケーションの本来の目的が達成される

 
  • ※ 吃らないで、滑らかに話せることは、必ずしも問わない
 
  • 誤解がないように申しますと、私は、「吃らないで、滑らかに話せる必要はない」とか「吃る話し方を軽減するためのスピーチの練習の必要性を感じない」と言っているわけではありません。しかし、私は、「発話やコミュニケーションが吃らないで、滑らかに話せる」ことは、あくまでも、「発話やコミュニケーションの本来の目的が達成されやすくするための手段のひとつ」であり、「吃音改善の目的」ではない、というように考えています。そして、発話がコミュニケーションの本来の目的が達成されるための方法には、「吃らないで、滑らかに話せること」以外の方法もあり、どの方法を選択するかは、吃音がある人、一人一人が決めていけば良い、というように考えているのです。

発話やコミュニケーションの本来の目的が達成されやすくするための方法

 
  • それでは、「発話やコミュニケーションの本来の目的が達成されやすくするための方法」には、どのようなものがあるのでしょうか。私は、例えば、以下にあげるようなものが、これらの手段となると考えています。
    • 発話時の不安や緊張を緩和させる方法
    • 発話時の不安で不快な気持ちや、それに伴って生じる心身の緊張の緩和を目指す
    • リラックスするための呼吸法、系統的脱感作などの活用
    • 吃音でうまく話せないことに対する引け目を緩和する方法
    • 吃音でうまく話せないことに伴う欲求不満や恥ずかしさの緩和
    • 発話場面を回避することの自責の念などの軽減
    • 「吃音さえなければ」というデモストネス・コンプレックスの見直し
    • 認知行動療法、森田療法などの活用
    • 発話やコミュニケーション、対人関係をうまくこなすための方法
    • 発話やコミュニケーション自体の方法を学んだり、経験や能力を高める
    • 対人関係を円滑に行うための方法を学んだり、経験や能力を高める
    • 相手に伝えたいことをはっきりさせ、それを的確に伝えるための工夫をする
    • プレゼンテーションや、会話の練習の実施
    • アサーティブ・トレーニングや、ソーシャルスキル・トレーニングなどの活用
    • 自分にとって得意な場面、うまくいく場面の経験を積む
    • 自分にとって得意だったり、楽しい、うまくいくと感じる場面を繰り返し体験する
    • 発話やコミュニケーション、対人関係についての成功体験を重ねる
    • 自分の会話やコミュニケーションに対する有能感を高める
    • 力の入ったしんどい吃音がでにくくなる発話の方法
    • 「ゆっくり」、「そっとやわらかく」等の発話時の緊張が入りにくい話し方の学習や練習
    • 吃音が出てしまう時の心身の状態についての学習や実態把握
    • 発話時に緊張が入ってしまった時の対処の仕方(随意吃など)の学習や練習
  吃音改善のための取り組み3  

吃音改善について、私が思うこと

 
  • 以上、吃音改善についての、私の考える目的や方法について述べてきました。最後に、まとめとして、吃音改善を図っていく上で、私が大切に思うことを述べたいと思います。
 
  • 実際の発話・コミュニケーション場面の中で話すことが大切
    • 私は、吃音の改善は、「発話・コミュニケーションの場面の中で話す」ことでのみ達成されると考えています。もちろん、話す前に行う様々な下準備や、吃音が出にくい話し方の練習等はとても大事なことだと思います。しかし、これらの下準備や練習「だけ」を行っていたのでは、なかなか吃音の改善は図られないと思います。出来うる準備を色々としながらも、どこかで、(たとえ、不安や緊張はあっても)「えいやー」と本番に臨んでいくことが、大切なのだと思います。
   
  • 発話の練習(言語面)だけでなく、気持ちに対するアプローチ(心理面)が必要
    • 私は、吃音の話し方が生じる背景には、発話に対する欲求不満や不安、自責の念といった否定的な感情が及ぼす影響が大きいというように考えています。これらの否定的な感情があると、体の緊張が増大し、それが吃音の話し方が増加する、というように言語面の問題を悪化を招くと考えられます。このような心理面の問題が発話面に与える影響を防ぐには、否定的な感情が増大しないように、気持ちに対するアプローチも、行っていくことが有効です。
   
  • 苦手な場面からではなく、得意な場面から取り組んでいくのが効果的
    • 得意な場面から取り組んでいくことのメリットには、以下のようなことが考えられます。まず、第1に、得意ことはあまり嫌にならず楽しく取り組むことができやすいので、取り組みが長続きしやすいと考えられます。第2に、得意なことは、苦手なことに比べて成功体験が得やすいことから、前述した否定的な感情を感じることが少ないと考えられます。第3に、出来ないことからよりも、出来ることからの方がより多くのことが学べる可能性があると考えられます。出来ないことは、通常「どうしたらできるようになるか」もわからない暗中模索の中で、試行錯誤し続ける必要があります。しかし、出来ることは、「どのようにしたらできる」かは既にわかっていることが多いので、あまり試行錯誤なしにスムーズに取り組むことができやすいのです。
 
  • 以上、私が考える吃音改善のための取り組みについて、まとめてみました。ご参照になるところがありましたら、幸いです。